■ [事件] 2008/08/25 鹿沼のこと。
鹿沼のこと。
テレビや新聞での報道が断片的で、しかも消防&警察叩きにしかなっていないので、とりあえずまとめてみた。多少前後するところもあるかもしれないけど、新聞記事から抜き出したところこんな感じ。
・8月16日、栃木県鹿沼市でゲリラ豪雨。
・17時半からの1時間で、床上浸水等で46件/時の119番通報あり。通常は15件/時のため、担当を3人に増員して電話受付対応。
・17時33分、市道の水深20cmを超える。
現場300m手前、50m手前の看板に通行止めの表示を出す。
その後、補助的な措置として委託業者がバリケードを設置すべく現場へ向かうも、すでに冠水し設置できず。
・17時58分、被害者の水没現場より1km東南にある東北道高架橋下の市道で、夫婦の乗る車が水没した110番通報あり。近くにガソリンスタンドあり。
以後、6分間に合計5件の通報があった。
運転手からも「なんとかなる(自力脱出できる)」と連絡あり。
消防からも鹿沼署へ連絡。→最終的に警察が脱出を確認。
・18時。大雨洪水警報発令。消防全職員に対し非常招集をかける。
・18時10分ごろ、被害者の車が東北道高架橋下でハマる。
・18時19分、目撃者から110番通報「ガソリンスタンドの(近くの)橋の下に軽乗用車が流されている。中に人がいたようだ」
・18時21分、被害者より110番通報「車が水没して閉じ込められている。水が入ってくるがドアが開かない」。1分30秒間話をして電話が途切れる。現場が特定できず。
・18時22分、被害者の母親から「娘が『車ごと川に落ちた』と携帯電話で知らせてきた」と119番通報。
消防は武子川へ救助工作車を向かわせ、捜索。
・18時26分、「ガード下に車が沈んでいる」と119番通報。
直前の通報がガソリンスタンドの近くと同様の場所、状況での水没事故であり、それと混同、警察が現場に向かったと判断し出動せず。警察も直前の通報と同じと判断し、被害者の現場へ向かわず。
・18時29分、「車が2台沈んでいる」「車が沈んでいくのを見た。中に人が入ったまま」と通報。
消防本部内で情報がうまく伝わらず出動せず。
・18時50分ごろ、通りがかった鹿沼署員が冠水現場を見つけて事故警戒を開始。
・19時20分ごろ。水が引いたことにより水没していた車両が発見される。
このへんを参考にしてみた。
・東京新聞:鹿沼・水没死 栃木県警も出動せず 別に救助通報5件、混同:社会(TOKYO Web)
・東京新聞:車水没 女性死亡、出動せず 消防長『遺憾』:社会(TOKYO Web)
・東京新聞:鹿沼の車水没・女性死亡 『正常な判断できず』 ゲリラ豪雨でパニックに:栃木(TOKYO Web)
・asahi.com(朝日新聞社):車水没現場、警察も勘違い 通報受信後も出動せず 栃木 - 社会
・asahi.com(朝日新聞社):情報混乱、消防本部救出に行かず 栃木の軽乗用車水没 - 社会
・栃木・水没死、県警も出動せず…110番で場所特定できず : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
・車水没死現場に消防出動せず、119番通報を誤認…栃木 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
・栃木・鹿沼の車水没死:別の事故と混同、県警も出動せず - 毎日jp(毎日新聞)
・鹿沼の車水没死:救出未出動、別の事故と混同 市消防本部、3回通報受けるも /栃木 - 毎日jp(毎日新聞)
・栃木・鹿沼の車水没死:消防、通報に出動せず 「情報殺到し混乱」 - 毎日jp(毎日新聞)
そんなわけでマスコミが消防や警察の対応について一方的に叩きまくって被害者の非とか完全に無視してる状況でしたが、車の免許も持ってなければ車を運転したこともない人間が何か書いてみる。
まずは通過儀礼のようなお役所について。
通報が殺到して受ける側もパニックになってたとか言い訳にもならない、とコメンテータはそればかり叩いてたのが印象的でした。でもそれ以上の何かのコメントは無いんですよね。ただ叩きたいだけなのかなっていうコメントばかり。
そもそも、現場は必要に応じて通行止めの表示を出すようになっている場所で、大雨などがあれば“危険性のある場所であることがあらかじめわかっている”場所で、しかも当然1か所ではない。今回はたまたま高架下の近くにガソリンスタンドがあるという場所が2か所あり、しかも片方で事前に同様の事故が発生していたという、“冷静であっても勘違いしやすい”状況が作られている。ということは、だ。少なくとも消防なり警察は危険な場所について、きちんと把握してなかったのではないか、場所があって何らかの対策はしていても、今回のような状況下できちんと対応できるような準備などはしてなかったのではないかと思うわけであります。
しかも困ったことに、通行止めを出すのは市で、消防や警察はノータッチ。連絡もないらしい。そういう横の連携ができていないのは今も昔も変わらずといったところか。
ちょっと余談。
通報すると、とりあえず場所を聞かれるのだけれど、よくわからない場所を伝える時、どうすればいいのかと思うことがある。ランドマークや住所表示が別に問題ないが、そうではない場所ではどうすればよいのか。公衆電話からの通報であれば、電話ボックスに住所が書かれているから問題ないが、そうではない場合は……。と、歩いていて、自分がいまいる場所で何か事故が起きて通報するとき、どうやって場所を説明したらいいのやらと思うことがたまにあります。事故が起こりそうな場所とか、何か目印になる表示でもあればいいのにねぇ、なんてことを思うわけですよ。
余談終了。
さて続いて、被害者について。
・なぜそこに行ったのか
街頭もまばらで暗い住宅街の夜道を消灯したままビューンと駆け抜けていく自転車とかよく見かけるけど、どうしてあんなに自信満々に駆け抜けられるのか不思議でならない。自分の姿が見えにくく、相手の姿が見えにくい状態で迷いもなく交差点に突っ込めるって、どれだけの自殺願望があるのか……と思う。
それと同じで、なぜわざわざ水がたまりやすい、実際たまってた高架下の窪んだ道路に入り込んだのか……、と思ってしまう。ところが、死ぬか助かるかは別にしてこの手のケースは意外とあるようで、実際今回も別の場所で夫婦の乗る車が溜まった水によって身動きができなくなっている。こういう時、一番怖いのは“大丈夫”と思ってしまう人の心理じゃなかろうか。例えば火災報知機が作動しても、特に何のアクションもせずに「誤動作か試験か何かだろう」と思ってしまう人がいる(どの程度の人がいるかは、さまざまだろうが)。あまり日常的ではなくその人にとって現実感のないことが起こった時に、人は自分にとって都合のいい方向に考えてしまうらしい。
自然災害あたりだと、「いままでそんなこと起こったことないから」というもっともらしくそれなりに根拠がありそうで、意外と根拠がないことにすがってしまっている。それは別に悪いことではないし、考え方としてはありだと思う。ただ、過去に被害があった場所に比べたら被害にあう可能性は低いのは確かだろうが、これからも起こらない保証にはならない。そこのところがすっかり抜けてしまうのが、“都合のいい方向に考えてしまう”心理の怖いところなのだろう。
今回の被害者も、そんな感じで大丈夫と思って突っ込んでしまったのだろうか。あるいは、何も考えて無かったか。
・なぜ水圧でドアが開かなくなる前に脱出しなかったのか
普通なら脱出するんだろうけども、そうでないってことはそういう状況ではなかったということか。直後の目撃者の通報だと、水の中に車が入っている、だったらしいので、たぶんドボンと車が入った時点でたまっている水の量は相当だったのだろうか。でも車ってそんなに簡単に沈むかな。ドボンとはいってすぐならドアは開かないのかな。そのへんどうなのよ。素人考えかもしれないけれども。
・なぜ窓を割って脱出しなかったのか
そのための工具を常備してなかったんだろうなぁ。手動で開くことができない窓なら、万が一のことを考えて置いておくべきじゃないかな。ちなみに、以前、窓を割って脱出するも結局溺れて死んでしまった運転手がいたらしい。なぜ溺れたのかはわからないけど。
・なぜ冠水して水圧が平衡化しつつあるあたりでドアを開けて脱出しなかったのか
海や川だと(沈んだり流されたりで)時間的に厳しいんだろうけど、場所が道路だし、ある程度の量の水が車の中に入ってきてたら水圧が下がってドアが開いて脱出できるような気がするが。わざわざ溺れ死ぬまで車の中にいなくても……と思う。
・パニックは誰にでも起こりうるということ
結局、被害者はパニックになっていたがために、残された助かる可能性を自らつぶしてしまったのかもしれない。とはいえ、生きるか死ぬかという場面で、冷静になれと言われても難しいですな。自分では冷静なつもりでも、はたから見れば全然冷静じゃないこともある。明日は我が身と思って、今回のことを教訓に気をつけたいものです。
ところで……
・通行止めの表示をなぜ無視したのか
可能性1 単純に気づいてなかった→前方不注意
可能性2 豪雨の影響で視界不良だった→その状況で走行するのは危険
可能性3 気づいたけど、あきらめたら試合終了だと思った→安西先生、バスケがしたいです
その後。
・鹿沼の車水没死:県警が遺族に謝罪 本部長「心よりおわび」 /栃木 - 毎日jp(毎日新聞)