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レドリルAdventure
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銀河鉄道 Another Journeys レドリルアドベンチャー

第017話 いまそこにいる僕 (前編)



通路のような場所。あたりは薄暗く,奥のほうは暗闇。
その暗闇の奥から,少年が泣きながら歩いてくる。

 ……じゃうよ,……ちゃんが……じゃうよ……

そばには大人らしき人影があり,少年はそれに向かって涙を流しながら何かを必死に訴えていた。だが,その人影は少年の訴えを聞き入れようとはせず,少年をなだめたかと思うと,そのまま立ち去った。薄暗い通路に取り残される少年。少年はそこで泣き崩れていた。

 フォオオオ……オオオォォ……ォォォォ…………

汽笛の音に目を覚ました。どうやら夢を見ていたようだ。小さいころの夢。とても悲しい思い出だ。だいぶ昔なので細かいことは忘れてしまったが…。どうやら夢に同調するかのように,現実の自分自身も泣いていたようだった。

メーテル「どうしたの? 夢でも見たの?」
レドリル「あ,うん。とても悲しい夢だった」

照れを隠しつつ,涙をふいた。

レドリル「ハハハ,変なとこ見られちゃったな……
     それにしてもなかなか次の駅に着かないね」
メーテル「ここは距離があるから時間がかかるのよ」
レドリル「ふうん,そっかぁ…」

そこで会話が止まってしまった。何もすることがなく退屈だった。何回かあくびをしたところでメーテルが話しかけてきた。

メーテル「…ひま? レドリル…」
レドリル「ん〜,実を言うとね。もう眠くないし…」
メーテル「それなら図書室に行くといいわ。
     あそこにはたくさんの本があるからたいくつはしないわよ」
レドリル「図書室か……マンガとかあるの?」
メーテル「あると思うけど」
レドリル「……よし,行ってみよう。行ってくるよ,メーテル」

そう言うと,立ち上がって図書室のほうへと歩き出した。

本を読むのは嫌いじゃない。嫌いだったら図書室に行こうなんて思わないから。むしろひさしぶりにたくさん本が読めそうだからワクワクしているくらいだ。小さいころは本をよく読んでいた。まだ父さんがいたころだ。あのころはまだ引っ越してきたばかりで友達もあまりなく,本を読んでばかりいた。だけど,読んだ本が一体どこの本だったのかまったく思い出せない。今思うと,あまり裕福ではなかったから,そんなにたくさんの本があるとは思えないんだ。でも,実際には毎日とっかえひっかえ読めるだけのたくさんの本があった……と記憶している。さっき夢で見たことがあってか,それからしばらく本を読もうと思えず,外で遊んだりしていた。それからまた本を読もうと思ったが,本のある場所がわからず,両親に聞いても,家の中にも家の近くにもそんなところはないと言われ,それっきりになってしまった。

そんなことを考えているうちに,図書室の前に到着した。扉を開けると,中から本の独特な匂いがしてきた。そこは薄暗い場所だった。あかりをつけようかと思い,壁を探ってみたがスイッチらしきものはみつからなかった。ふと見上げると,天上には裸電球がぶらさがっているだけだった。それはすでについていて,これ以上は明るくはならないようだ。天下の銀河鉄道のわりにはあまり環境がいいとは言えないが,本は一応読めるのでとりあえずそれでよしとした。あたりを見渡す。

レドリル「…ふーん,いろんな本があるなぁ……
     さぁて,どれにしようかな〜♪
     なーんて迷うまでもなく,マンガを…(笑)
     …………………んーと,どこかな…………………」

本を探そうにも遠くからでは細かい字まで判別できずに,近づかなければならない。どんな本があるのかは,じっと見なければわからなかった。そんな部屋の中をうろつきながら,本棚にある本を見る。キョロキョロしながら背伸びをして上のほうを見たり,しゃがんでみては下のほうを見たり…。よく見てみると本棚の本は整理されているとも言いがたく,ひどいものには単に積み重ねられているだけのものもあった。正直,どこになにがあるのかもわかりにくい状態だった。少し疲れてきてしゃがんで休んだ。ふと顔をあげあたりを見わたすと何か懐かしい感じがした。

レドリル「なんかどこかで見たことあるような……」

デジャヴというやつだろうか…以前来たことがあるような…そんな気がした。何かを思い出したようにたち上がると,奥のほうへと進んでいった。

レドリル「こっち…かな……」

奥へ進んで突き当たる。そこを右に曲がって角のところに行くと,無造作に積まれているマンガ本があった。

レドリル「…あ……本当にあった。……やっぱ来たことがあるのかなぁ。
     でも999なんて乗ったことないしな……
     これがデジャヴってやつなのかな。
     ま,いいか…マンガもあったことだし」

そこに積まれているマンガの山から適当に1冊選び,座りこんで読み始めた。しばらく読みふけっていると,突然,呼びかける声がした。

    「おにいちゃん,だれ?」

声のする方を見ると,3歳…か4歳くらいの男の子がそこにいた。

<「いまそこにいる僕 (後編)」へつづく → >


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