銀河鉄道 Another Journeys レドリルアドベンチャー

−前回のあらすじ−
 不覚にも列車から落とされてしまったレドリル。
 無情にも999号はレドリルを置いて発車してしまったのだった。



第016話 超過密住国 その2

フォォォォォォォォォ…………

遠くからかすかに聞こえる汽笛の音。
その音はだんだんと消え，聞こえなくなっていった。
それは，999号がこの星から走り去ったこともあらわしていた。

レドリル「戻って…こないか………」

しばらくぼーっと空を見つめていたが，だんだんと腹が立ってきた。
なぜ自分が落とされなければならないのか，納得がいかなかったのだ。

レドリル「ちくしょ〜!! 誰だ，ロープなんかでオレを落としたのは〜!!」

叫んだレドリルは暴れ出した。
しかし身動き一つ取れないところなのでそれほど暴れることは出来なかった。
だがまわりからすれば迷惑千万。

人　　　「コラ，暴れるな」
人　　　「む〜」
人　　　「しむ〜」
人　　　「ぶちころす〜」

そんな中，一人の男が言い出した。

男　　　「オレだ。オレだ」
レドリル「なに〜」
男　　　「999号に引っかけてのぼろうとした。そうしたらお前がひっかかった。
　　　　　ひっかかったお前が悪い。オレは悪くない。どうだ，なんか文句言ってみろ」
レドリル「くそ〜〜ぶちのめす!!」

そういうとレドリルは人をかきわけて，その男のほうへ行こうとした。

レドリル「待ってろ，てめ，くそ〜」

もうヤケである。だが身動きできないのでなんともできない。

レドリル「くそ〜，くそ〜」

そのころ，999号では……。

機関車　「ダメデス。戻ルコトハ出来マセン。ダイヤガ乱レテシマイマス。
　　　　　ソレニ，発車マデニ間ニ合ワナカッタノダカラ，仕方アリマセン」
車掌　　「どうしてもか」
機関車　「ダメデス」
車掌　　「そこをなんとか」
機関車　「ダメナモノハダメデス」
車掌　　「わからずや!!」
機関車　「ワカラズヤデ結構。私ハ私ノヤルベキコトヲヤッテイルダケ」
メーテル「機関車さん，どうしてもダメかしら」
機関車　「タトエ，オ客様ニ頼マレテモ戻ルワケニハ行キマセン」
メーテル「では，これならどうかしら………」

場面は変わって惑星コンプレス。
人の波がまるで雪崩れのように動いていた。
人が意志をもって動いていると言うよりも，なんらかの力が働いて
動かされていると言うような感じだ。
一度動くと，ずるずると動いてしまう。
止まろうにもあとから押し寄せるので結局止まることも出来ない。
全体が止まるまで止まることも出来ないのである。
さきほどは動くことすら出来なかったが，なんとも皮肉な話だ。
レドリルはというと，人の波とともに移動していた。
駅が遠くに見えてしまうような場所だ。

レドリル「む，むむむ，くそっ，やっぱ動けないや…うおっとっと，また動き始めた」

左に行ったり右に行ったり，進んだり戻ったり，そんなことをしているうちに，
自分の体が他の体にからみついてしまう。そうやってさらに身動きができなく
なってしまうのであった。

だが唯一の救いがあった。
それは，こうやって人の波が動くときに自分の体を動かす余裕が出来ることだ。
この時に体勢を変えることが出来るのだ。

レドリル「よ，よよよっと。ふう，なんとか楽なカッコになった………え?」

その時，遠くから汽笛の音が聞こえてきた。

フォォォォォォォ……

レドリル「999? まさか……」

駅の上空はるか彼方に黒い物体が見えた。
その物体はだんだんと大きくなり，それが機関車であることがはっきりとわかった。

レドリル「999!! 戻ってきてくれたんだ!! って，この状態でどうすりゃいいんだ!?」

そうだ。レドリルはいま駅のそばにいるわけではない。
駅からかなり離れた位置にいる。
しかも，身動きはとれないでいるのだった。

レドリル「ちょ，ちょっとどいて…駅まで行かせてくれ〜……」

999号はまたもとの駅の上空へ戻り，停車した。
メーテルと車掌はレドリルの姿を探したが，みつからない。
これだけの人間の中から一人の子供を捜すのは容易ではなかった。

車掌　　「どこにいるんでしょうか。早くしないとまた発車してしまいます……(汗)」
メーテル「……………………あ…車掌さん，あそこ…」
レドリル「お〜〜〜〜〜〜〜い」
車掌　　「レ，レドリルさん!!」

レドリルは走っていた。人の頭の上を走っていた。

車掌　　「レドリルさん，なんてところを走って……」

列車の真下まで来たレドリルは，降りてきたメーテルとともに999号へと戻った。
そして999号は急発進して惑星コンプレスを後にしたのだった。

レドリル「もうダメかと思った…」
車掌　　「でもよくあんなこと思い付きましたね」
レドリル「身動きとれないからさ，いっそのこと頭の上に出て手を振ろうって
　　　　　思ったんだけど…よく考えたらそのまま頭の上を走っていけばって
　　　　　思って。でもなんで999は戻ってきたの?」

車掌　　「それはもう，メーテルさんのおかげでして，ハイ」

　メーテル「レドリルは下車したわけではありません。
　　　　　　誰かに列車から引きずり下ろされたのです。
　　　　　　本人の意思ではないのだから不可抗力。
　　　　　　罰するのならレドリルではなく，列車から引きずりおろしたものに
　　　　　　すべきでしょう。それに本来，乗客の安全を守らねばならないはずの
　　　　　　銀河鉄道側にも問題があると思いますよ」
　機関車　「管理局ニ問イ合ワセシマス……………
　　　　　　特別ニ戻ルコトヲ許可スルトノコトデス。
　　　　　　窓カラ落チタコト，ソレヲ防ゲナカッタ事実ヲ認メマス」

車掌　　「と，いうわけです」


余計なことはしないほうがいい

そう思ったレドリルだが

きっと寝て起きたら忘れているだろう。

好奇心とはそういうものであり

探求心とはそういうものだ。






−次回予告−
いると思えばいない，いないと思えばいる
レドリルの見た少年はいったい何者なのか…
次回，第017話は「今そこにいる僕」をお送りします。