銀河鉄道 Another Journeys レドリルアドベンチャー

−前回のあらすじ−
 さらわれた人を助けるべく立ち上がったロッテと少年。

 ロッテの合図があり，少年は裏口のトビラから中へ入っていった。


第010話 新たなる旅立ち その4

手下　　「ボ…ボス…!!」
ボス　　「どうした」
手下　　「あ，はい，何者かが侵入したようでして」
ボス　　「ほう，映してみろ」

モニターには，慣れない銃で戦いながら先へ進んでいる少年が映しだされていた。

ボス　　「子供ではないか」
手下　　「は，それが，正面からはめっぽう強い輩がいまして……」
ボス　　「裏は手薄だ，というわけか??」
手下　　「はい，申し訳ございません……(汗)」
ボス　　「それを映せ」
手下　　「はっ」

左手にコスモドラグーンを持ったロッテが映し出された。
右腕は負傷したらしく，なにか包帯のようなものが巻かれていた。

ボス　　「手負いだな。強いのか??」
手下　　「は，それが恐ろしく強く，我々では……」

ふと少年の映し出されているモニターに目をやると，銃を撃たずに
銃の柄で格闘している少年がいた。カメラに気がついたのか，カメラに
向ってあかんべーをしていた。
ボスと呼ばれるその男は，ため息をついて言った。

ボス　　「手負いの戦士に，弾切れの子供か。ずいぶんなめられたものだな」

少し考え込んで，手下に言った。

ボス　　「まあいい，退屈してたところだ。相手をしてやるか……フフフフ」

少年が大広間へ入って来た。少し遅れてロッテが同じ広間に到着した。

ボス　　「ようこそ。俺の名はマンティス。名前くらい聞いた事はあるだろう??
　　　　　世に恐れられている双頭龍のマンティスとは俺のことだ。
　　　　　ずいぶん，なめた真似をしてくれたようだが，それもここで終りだ」

ムッとしたロッテが言う。

ロッテ　「終わり?? そっちこそ，すいぶんなめてるじゃないか」

ボス　　「手負いに，弾切れ。それで何ができる??」

その言葉に驚いたロッテが少年の方を見て言った。

ロッテ　「手負いに弾切れ?? じゃ，お前もか!!」

少年　　「すみません，調子にのって残り5発全部使ってしまいました……」

ボス　　「『も』か……ふふふははははっ，益々勝ち目はないな」

少年　　「撃てなくても，武器にはなるぞ!!」

マンティスは不敵な笑みを浮かべたかと思うと，腰の両側にある銃を抜いた。

ボス　　「どうやって立ち向かうつもりだ!? ふははは……」

突然，ロッテがマンティスに向かって駆け出した。
マンティスは，ロッテに向かって銃を撃つ。
が，その瞬間，マンティスの顔面に銃がぶち当たった。

少年　　「こういう使い方だってあるんだ!!」

体勢を崩したマンティスの銃弾は，方向をそれてしまった。
そして，ロッテの左パンチが入る。

ドカッ

だが，利き手ではない事が災いし，倒れるまでいかない。
崩れた体制から，マンティスの銃口から火を吹く。

ロッテ　「ッ!!」

銃弾がロッテの左手に当たった。
トドメをささんとばかりにロッテに銃口をかまえたその時，

ドウッ!!

1発の銃弾が，マンティスに命中した。

ボス　　「な…なにぃ!?」

マンティスが振り向いた方向には，銃をかまえた少年がいた。
先ほどの銃弾は少年の撃ったものだった。

ボス　　「馬鹿な……弾切れじゃなかったのかっ……」

ロッテ　「あの銃には弾が『6』発こめられてたんだよ」

ロッテが，マンティスの後頭部に銃口を突き付けて言った。
マンティスは驚いて，そしてその表情には焦燥が見受けられた。

ボス　　「まさか，お前も…!?」

ロッテ　「どう思う??」

余裕の受け答えのロッテに対し，顔が青ざめはじめたマンティス。

ボス　　「ま，待ってくれ，俺はマンティスじゃないんだ。
　　　　　この名前を使えば，誰もがビビって……，
　　　　　だからちょっと借りてたんだ。
　　　　　俺はホントはギースっていうんだ。頼む，見逃してくれ」

少年　　「さらった人はどこだ!!」

ボス　　「わ，わかった。解放する，解放する。
　　　　　だから助けてくれ，見逃してくれ」

その情けない姿を見たロッテは，銃を下げた。
そして，ギースと名乗る男の耳元でささやいた。

ロッテ　「マンティスってのはな，刀の使い手だ。お前がニセモノ
　　　　　だって事は，はじめからわかってた。それにな，本物の
　　　　　マンティスなら，弾切れなんて猿芝居にひっかからんよ」

そう言うと，ロッテと少年と黒服の女性はその場を立ち去り，
駅の方へ向かった。

−駅−

黒服の女「ありがとう。今度は私が助けられたわね。
　　　　　これで借りは返してもらえたわね」

少年　　「いや，でも半分以上，ロッテさんの活躍だよ。
　　　　　まだ借りは返しきれてないよ」

黒服の女「そう。…………それなら，あなたに頼みたい事があるの」

少年　　「頼みたい事??」

黒服の女「これからの旅，あなたにボディーガードをお願いしたいの。
　　　　　今回みたいな事がこれからないとは限らないから…。
　　　　　その代わり，このパスをあげるわ。
　　　　　ボディーガードの報酬みたいなものと思って」

少年　　「ボディーガード……俺に出来るかな」

ロッテ　「やってもみないで，出来るかどうかなんてわからないさ」

少年　　「…………(ポリポリポリポリ)…………わかった。
　　　　　ボディーガード，やります」

黒服の女「ありがとう。私はメーテル。よろしくね」

少年　　「あ，俺はレドリル。ハンマー・レドリル。
　　　　　こちらこそ，よろしく」

パスを受け取ったレドリルは，超特急へ向かった。

メーテル「これが超特急……999号よ」

レドリル「999…銀河超特急999……
　　　　　機械の体をくれる星へ連れていってくれる超特急…」
　　　　“乗れるんだ。行けるんだ。機械の体をもらえるんだ。
　　　　　母さん，父さん，夢が叶うのももうすぐかもしれないよ”

ふとホームを見ると，ロッテが一人立っていた。

レドリル「ロッテさんは，どうするんですか」

ロッテ　「俺は，別の列車に乗って旅を続けるよ。
　　　　　どこかの星で会うかもしれないな」

レドリル「気を付けて」

ロッテ　「お前もな」

ジリリリリリリリリリリ…………
ヴォオオオオォォォォォォォ……


少年レドリルの本当の旅が始まった。

銀河超特急999号に乗って，

夢をかなえるべく，

遥かなる終着駅を目指す。

その輝かしき第一歩は，

まさに今その時だった。




−次回予告−
惑星ハデスはすべてを凍り付かせる極寒の惑星。
身も心も夢も希望も，何もかもが凍りついていた。
次回，第011話は「凍てつきのハデス」をお送りします。