銀河鉄道 Another Journeys レドリルアドベンチャー

−前回のあらすじ−
 さむっ!! 999号の中は寒かった。そしてハデスに到着した。


第012話 凍てつきのハデス その2

レドリル「薄暗い……。もうすぐ夜なのか，それともまだ朝早いのか……
　　　　　でも時計は2時。どういうことだろう……」
メーテル「いまは昼よ」
レドリル「昼?」
メーテル「そう……昼の2時よ」
レドリル「でも，昼にしちゃぁ……」
メーテル「ここは太陽の光が届かないの。だから，こうして明かりをともして明るくしてるのよ」
レドリル「ん……?」

ふとレドリルは地面が気になり，しゃがみこんだ。そして，手で地面に触れてみた。

レドリル「冷た!! これ，氷…氷だ……。この駅，氷でできているんだ」
メーテル「太陽の熱が届かないから，とても寒く冷たい星。だから，こうやって建物も氷で作れるの」
レドリル「だんだん，からだが冷えてきた……x_x)」
メーテル「さ，近くのお店へ行って暖まりましょう」
レドリル「暗くて寒くて，なんかイヤな星だなぁ……」

お店へ向かった二人。駅のそばに1件だけある飲食店へ入っていった。
そこは駅のように氷でできているわけでもなく，暖を取ることができた。

レドリル「ふわ〜，あったかい。店まで氷でできているんじゃないかと思った」
オヤジ　「あそこは特別だ。店まで氷にしたら，ワシも死んじまう」
レドリル「今日はお客が少ないけど…」
オヤジ　「ああ，いつもこんなもんだ。誰もこんなところで住もうなんて思わんしな」

その店にはレドリルとメーテルの二人以外，客はいなかった。
店の外にも，通行人がほとんどいないという状態だった。

オヤジ　「駅見たろ。あんな駅じゃ，誰も降りようとせんよ。列車の中の方がマシだからな」
レドリル「降りたよ」
オヤジ　「バカなだけだろ」
レドリル「(怒) 列車の中が寒いんだから仕方ないじゃんか」
オヤジ　「寒い? んなバカな。天下の銀河鉄道だろう…」
メーテル「温度調整する装置がうまく動かないのです」
オヤジ　「ふうん，それで降りて，うちに来たって訳か。
　　　　　ま，旅にはそういうこともあらぁな。はっはっは」

店のオヤジとの会話はしばらく続いた。

オヤジ　「そういえば，あんた，どこまで行くんだ?」
レドリル「機械の体をタダでくれる星」
オヤジ　「機械の体? …………そうか」
レドリル「……?」
メーテル「………」
オヤジ　「………」
レドリル「……(汗)」
オヤジ　「今日は終いだ」
レドリル「え…? ……オレ，なんか悪いこと言った…?」

店のオヤジはジロリとレドリルをにらむと，こう言ったのだ。

オヤジ　「あんたに見てもらいたいものがある。ついてきてくれないか」

オヤジは店を閉めると，店の裏手に回った。
そこには氷付けになった美しい女性がいた。

オヤジ　「ワシの娘だ…生身の体のな。永遠の命…機械の体に憧れてな。
　　　　　それで機械の体を手に入れて，生身の体はこのとおりだ」
レドリル「掘ったあと…?」
オヤジ　「ワシだ。掘り起こそうと思ってな。掘ったあとから
　　　　　どんどん凍り付いていくからなかなか進まんのだよ」
レドリル「でも，なんで掘り越すの?」
オヤジ　「娘の願いだよ…。生身の体にもどりた言ってな。
　　　　　自分が自分でないような気がするって言ってたよ。
　　　　　老いて醜くなるのも嫌だが，自分でなくなるのはもっと嫌だと」
レドリル「娘さんは…?」
オヤジ　「死んだ。最後まで戻りたいって言ってた。
　　　　　アンタも機械の体を望んでいるようだが，それでも機械の体がいいかね」
レドリル「おじさんが何を言おうと，オレは機械の体，手に入れるよ。
　　　　　そのための旅なんだから。父さんや母さんのために，自分のために」
オヤジ　「そうか……アンタはまだ若い。いずれわかる時がくるだろう。
　　　　　旅も長いんだろう。どこかで一度，考えてみてくれ」

ブォォォォォォォォォォ……

発車間際の合図だ。

オヤジ　「ほれ，呼んどるぞ」
レドリル「あ，うん。………おじさん，ミルクうまかったよ」
オヤジ　「帰りも寄ってけよ。待ってるぞ」

手を振るレドリル。駅へ向かう二人。見守る店のオヤジ。

ジリリリリリリリリリリリリリ
ヴォォォォォォォォォォォォォ
プシュー!!

999号は惑星ハデスを離れていく。
下には氷の山を掘り起こす店のオヤジの姿が見えた。小さくなるまで見えた。





レドリルは思い出していた…

店のオヤジの言葉を。

だが彼の気持ちは変わらなかった。

絶対自分は後悔しない

機械の体を手に入れるのだ，と。




−次回予告−
彼の名前はじゅげむじゅげむごこうの
すりきりかいじゃりすいぎょのすいぎょまつ…
次回，第013話は「惑星じゅげむ」をお送りします。