「バカ言っちゃいけないよ。ちゃんとやってるよ!!」
と思ってる人も、実は多くの人が正しく点眼できていなかった、というお話。
ファイザーが40代から60代の男女に点眼方法に関する実態調査を行ったそうで、先日、その結果が発表されていました。
→ ファイザー株式会社 - 報道関係の皆様 - プレスリリース2010年度 40〜60代の男女 点眼方法に関する実態調査
正直、想像以上でした。ここまで間違った使い方が多いと薬剤師、医師、製薬会社ともどももうちょっとがんばらないといけないレベル。今はその手のことに携わってないからミジンコ以下な存在ですけど、一応私も薬剤師ですから、これはいくらなんでも情けないと思ってしまいます。自分は過去にきちんと説明していたかと振り返ると、2種類以上処方された場合に「5分から10分くらいあけて云々」と説明はしていたけど、1回1滴で十分という説明をしたかしてないかが記憶に無い。記憶に無いってことは、説明の必要性についてその程度の認識でしかなかったってことですな、自分の場合は。
まぁ、もっとも、目におさまる薬の量が決まっているので、1度に2滴以上さしたとしても (極端な話、1本全部いっぺんにさしたとしても) 余分な分は目から零れ落ちてしまうだけ。内服薬みたいに大量に服用して大変なことになるわけでもないし。そういう意味では、使い方として間違っているけど、間違った使い方してもさほど困らないというのが、結果として薬剤師側にとって説明不足になっていたり、患者側にとって間違った使い方がまかり通っている原因なのかな。
保管方法については、
・直射日光を避けること
・遮光容器に入ってるものは使用後に容器に戻すこと
・冷所保管の可否
くらいかな。冷所保管の必要のないものを冷蔵庫に保管してよいかどうかについて何か言ったかどうか定かではないです。ただ、言わないということは患者さんからすれば、普段自分がやってるやり方でOKととらえるだろうから、普段2滴さす人は2滴さすし、冷蔵庫で保管している人は冷蔵庫で保管するだろうし、ってところか。
そもそも保管については品質保持の目的があるから、たとえば冷所のほうが室温下に比べると成分の分解が遅いようなものは冷所保管に指定されているし、光による分解があるものは暗所保管に指定されていたりします。じゃあ、冷所保管なのに室温下に置いておいたり、暗所保管なのに直射日光下に置いておいたりしたらすぐダメになるのかと言えば、ものにもよるからなんとも言えないので、あながちそうとも言い切れないとだけ書いておきます。
とはいえですね、品質には2つの観点がありまして、1つは上に書いた成分保持。もう1つは汚染回避。汚染に関しては、たとえば、一度開封したら有効期限の表記に関わらず1ヶ月以内に使ってね、とか、使用後はきちんとフタを必ず閉めてねとか、点眼薬を複数人で使いまわさないでね、とか、まぁ、いろいろ気をつけておきたいことはあるわけでして。細菌の繁殖を考慮すると、冷所保管が必要ないものだとしても高温多湿な場所に長時間放置されるよりは冷蔵庫にでもいれておいてもらったほうがいい。開封後は冷蔵庫で保管してくださいというような説明を受けたことがあるなら、たぶんそういうのを考慮しての説明だったのだろうと思います。
なんにせよ、薬剤師が当たり前と思ってたことが患者さんにはきちんと認識されてなかったのだから、浸透するまでがんばってくだされ。
▼点眼滴数について
・2滴以上/回の人が全体の1/3
・正しく点眼できてると思ってる人は全体の85%
・2滴以上/回の人の中で正しく点眼できてると思ってる人は約8割
・理由
53%…1滴だと目全体や患部に薬が十分に行き渡っているかどうか不安だから
25%…より効果が高いと思うから
10%…さす滴数について手先の微調整ができないから
調査対象の年齢が高いということもあって“微調整ができない”という理由がでてきたけど、これは難敵です。メーカーはこういう意見に対してどういう改善をしていくかがポイントですね。
▼点眼後の行動
43%…目をぱちぱちさせている
30%…しばらくの間、目を閉じている
15%…しばらくの間、目を見開いたままじっとしている
6%…しばらくの間、目頭を押さえながら目を閉じている
・適切な点眼ではないのに正しく点眼していると思っている人は全体の84%
・理由
88%…目薬が目全体や患部に行き渡ると思うから
9%…目薬が目の外に流れ出るのを防ぐため
目をぱちぱちさせてしまうのは、意図してやってる人もいるだろうし、もしくはそれがクセみたいになってしまってる人もいるだろうし、刺激のあるものをさしたために意図せずにパチパチしてしまう人もいるだろうし。目は異物が入るとそれを出そうと涙を出して目をパチパチするのだけれど、市販品の、よくある疲れ目とかに使うものだと刺激性のある物質が入ってるので、そういうのを目にさすと反射的に目をパチパチさせてしまうんだよね。
そういうのを知らずに、「あぁ、目薬さしたらパチパチするんだー」って思っちゃうと、もしかしたら調査結果のように半分近くの人が無駄にパチパチさせてしまうのかもしれない。
目からこぼれてしまうので、目をパチパチさせちゃダメなのね。それと鼻涙管があるから、目頭をおさえておかないと、せっかくの薬が鼻に抜けてノドまで行ってしまう。
▼目薬が流れ出る
・目薬が目の外に流れ出ることがよくある人は全体の77%
・目薬が目の外に流れ出ることがよくある人のうち、48%が目をぱちぱちさせている
・目薬が鼻やのどに流れ出ることがよくある人は全体の24%
・目薬が鼻やのどに流れ出ることがよくある人のうち、93%が目頭を押さえていない
目におさまる薬の量より1滴の量のほうが多いので、きちんと点眼してる人でも、目から薬が流れることは十分にあります。目をパチパチさせてないのに目から流れ出るという人が結構いるのはこういった理由。
それから、鼻やノドに流れ出るのはとりあえずきちんと点眼すれば劇的に改善されるからたいした問題じゃないですな。
▼点眼時の不快
36%…目薬が目から流れ出て後始末が面倒
39%…目薬が鼻やのどの方に流れて薬の味を感じる
35%…目薬が目の中にうまく入らず、目の外に落ちてしまうこと
一番下の件は、どうしても目に入らないという人は補助器具を使うという手がありますな。さもなくば、自分以外の誰かに見てもらって、何が悪いのかを客観的に分析して改善すればよろしいかと。
後始末の件は1滴だけ点眼して目をパチパチさせなければ、面倒ってほど流れてはこないはずだから、あとは、まぁ、ほろりと落ちた涙を拭うかのように……とはいえ、女性は化粧してるからいろいろと面倒なことに変わりないのか……。
▼複数点眼時の間隔
63%…約5分以上間隔を空けている
37%…約5分以上間隔を空けていない
▼5分以上空けるのは、
21%…非常に面倒である
41%…面倒である
30%…少し面倒である
▼失敗したこと
50%…誤って目の外に点眼してしまう
41%…点眼容器がまぶたやまつげに接触する
39%…開封後1ヵ月以上経過した目薬を使ったことがある