さて……
・こんにゃく入りゼリー飲んだ幼児、また死亡事故(日経ネット)
・こんにゃくゼリー:三重・伊勢の事故では和解 - 毎日jp(毎日新聞)
・こんにゃくゼリー:死亡幼児は兵庫県の男児 安全性問う声 - 毎日jp(毎日新聞)
咀嚼能力と嚥下能力の低い人に飲食物を与える時は、まわりの人間も細心の注意を払うのが常識だと個人的には思う。これは、子供老人に限った話ではなく、こんにゃく入りゼリーに限った話でもない。
かねてから起こっているこんにゃく入りゼリーをめぐる問題は、どうも本質的な問題と感情的な問題がごっちゃになってしまって、マスコミがそれを面白く取り上げているように感じる。たとえば、
>男児は7月29日、祖母宅でおやつに凍らせたこんにゃくゼリーを食べた。直後にのどに詰まらせ
このような形で事故を取り上げて一方的にこんにゃく入りゼリーを叩いたとしても、その情報を受ける側はまともに受け入れてくれないし、大切なことも伝わらない。本来やるべきことは、それが持つ本質的な危険性と正しい摂取法を伝えること、そして企業努力を継続するように促すことではなかろうか。
国民生活センターが把握しているのは、1995年以降こんにゃく入りゼリーで死亡したのは17件 (うち7歳以下が10件)。これはあくまで国民生活センターが把握している数であり、実際の事故数はこれより多い可能性があることは認識しておきたい。その上で、これらの資料を見ると面白い。
これは厚生労働省が発表している1995年から2006年までの統計だが、「気道閉塞を生じた食物の誤えん」は年間4000件ほど発生している。
同じ厚生労働省の2006年対象の発表資料だが、「気道閉塞を生じた食物の誤えん」はほとんどが中高年以上で、45歳以上で全体の97%を占める。
もちろん調査上の数値であるためこの数値が実態を確実に指し示しているわけではないが、調査の方法や数値処理の手段が適正であれば大きく値がずれることはなく、とりあえず実態に近いものであろうことはわかる。
さらにこのような資料もある。
これらの資料が仮に正しいとするならば、国民生活センターの島野康理事が話したとされる「これだけ大勢の人がなくなっている。政府で何らかの規制、対策を考えるべき」この言葉は表現上疑問が残る。
気道閉塞を起こし死に至らしめる食品という観点で見ればこんにゃく入りゼリーの存在はごくささいなものでしかなく、むしろ「もち」「米」「パン」「飴」「団子」といった食品のほうが遥かに死亡者数が多い。リスク管理の観点ではリスクの原因となるものをあらかじめ排除しておくということもリスク回避の上で有効な手段だが、だからといって「製造しない」という手段を取ったとしても、今後ごくわずかに発生するであろうこんにゃく入りゼリーによる死亡事故が減る程度でしかなく、食品全体における気道閉塞による死亡事故についてはたいして寄与しない。それなのになぜこんにゃく入りゼリーだけなのか、他の食品に対してはなぜ文句を言わないのか、そのあたりを納得させるだけの材料が一切提示されていないところにダメっぽさを感じる。これでは「楳図邸を叩いている人たち」とたいして変わらない。
ただ、誤解してほしくないのは、こんにゃくゼリーの製造を中止しても意味がないと言っているわけではない。それを実施することと他の手段を取ることの効果と影響を加味して、どうすれば事故防止と嗜好を両立できるかを考慮して慎重にすすめていくべきだし、こんにゃく入りゼリー以外の食品について今後どう扱っていくべきかもあわせて検討していくべきだと思う。
そもそも誤飲についても原因はいろいろあるわけで、ざっくりあげてみると
▽通常の摂取において発生する誤飲
・構造上の問題によるもの
・食品の持つ物性によるもの
・ユーザーの間違った摂取方法によるもの
▽偶発的な事象により発生する誤飲
これらに関して具体的にどのような対策があるかというと(以下略)
……というところまで突っ込んで調べて報道してほしいもんですよね。
事故を装って子供を食べ物で窒息死させ、メーカーを相手取り裁判起こして、子供処分&賠償金ゲットしてウマーな人が出てこないことを祈りますよ。